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アニメや映画などを観て感じたこと、想ったこと。ネタバレする場合有。

「テイルズオブベルセリア」初回クリア後の雑感(ネタバレ)

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【前提として、1回はエンディング視聴済みのシリーズタイトル】

P(クロスエディション)、E(PSP)、S(GC)、A(PS2)、V(PS3)、G-f、X、X2、Z、W2。

トップにも書いてありますがネタバレ有なので、そこんとこよろしく。 

 

 

【昔話をします】

前作の「テイルズオブゼスティリア」が発売したのが約1年半前。

少なくとも私の知る処では不評に不評と少しの庇いを重ねたゼスティリア

私自身もあまり良い印象は残っておらず、キャラ同士の楽しい掛け合い、隅々まで気の利いた小ネタの数々、飽きにくい戦闘システムといった(私が思う)テイルズオブらしさは片鱗こそ見えるものの、私はその面白さを十分に受け入れきれず、当時を見返しても「全体的に惜しいが積み重なった結果」というツイートを残していた。

そして良くも悪くも「期待しすぎてしまった」という事は多分にあると思う。

 

さて、最初からネガティヴな事を言ってきたが、今になって思うと「見方を変えれば"素材"としてはある程度のものは揃っていた」という様にも思う。

このポジティヴな考えを強めてくれたのが去る8月18日に発売となった「テイルズオブベルセリア」。

私は今回、事前情報をほとんど入れずにプレイを開始した。

知ってたのは「シリーズ初の単独女性主人公(CV:佐藤利奈)」とその主人公の容姿ぐらい。後はTOZXで知った知識ぐらい。

プレイ前の印象としては「主人公は、見た目はTOXのミラみたいだが、設定から読む歩む道はTOVのユーリに近くなるのかな」と。

 

【物語を構成する対比】

文字通り期待と不安が入り混じる中で始めたベルセリア。始めてから実感する物語の暗さと緋(あか)さ。

目の前で最愛の弟ライフィセット(以下:ラフィ)を義兄アルトリウスに殺され、

自らも人とは異なるものに成り、

義兄の手によって独房へと入れられ、

その変容した左手で怪物たちを3年間にわたり喰らい続け、

義兄への復讐の為に脱獄し、

その過程で脱獄を手引した知人を喰らった。

そんな主人公ベルベットの背景や容姿、性格を反映し物語は序盤から暗い雰囲気が非常に強く出ている。

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ベルベットが暗さに特化した容姿であるのに対し、敵役であるアルトリウスをはじめとした聖寮は全体的に明るい容姿でまとめられている。

更に、物語全体の大きなテーマとして「感情と理(ことわり)」、「個と全」が挙げられる。個人的な感情で動くベルベットに対して、あくまで全体の為の理(性)こそが最善と割り切るアルトリウスという構図が描かれている。

劇中でアルトリウスは民衆から英雄視されており人類を導く者として「導師」の称号を与えられ、逆にベルベットは世を見出す悪として「災禍の顕主」の呼び名が市井で流布し始める。

主人公と敵役、善悪が一見逆転したかのような捻れは導入として面白いと思うし、最後まで続くこの対比構造は物語のテーマとして意識させられるところ。

 

早々に言ってしまうが、

ベルベットとアルトリウス、どちらのやり方が正しいのかは劇中で答は出ない。少なくとも私はそう感じた。どちらの案も不完全だったように思えるが、その理由については後述する。

 

 

【ベルベットが貫く物語の芯】

ベルベットと他の多くのシリーズ主人公を照らし合わせるものとして「主人公個人の最初の目的が物語全体を俯瞰した時に何処に位置しているのか」という処だと私は思う。勿論、ベルベットの様な主人公もいない訳ではない。

ベルベットの目的は「義兄に弟を殺された復讐を果たす」事。結果論ではあるが、これは物語全体から見ても着地点である。

序盤からベルベットは一貫して「義兄を殺す」事以外はほぼ眼中に無く、パーティーキャラが関係ない行動をとれば、容赦なく置いていくという姿勢を崩さない。

主人公の目的と物語の着地点が初めから最後までブレないと言う事で作品の真ん中に1本の大きな芯が通っているように思う。

前述した対比構造共に物語の根幹を成すものであると思う。

 

【感情と理を育てるパーティキャラクター】

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「類は友を呼ぶ」とでも言うのだろうか。上記した主人公に似たような仲間が集ってくる。

ロクロウは「恩返し」と言ってはいるが、アルトリウスの仲間であるシグレを斬るための最善策としてベルベットの傍を選んでいるだけ。

アイゼンは海賊団の副長として行方不明になっている船長を探しており、その事で利害が一致している為。

マギルゥは未だにハッキリしないが。暇つぶし、ロクロウとの賭けの結果を見届けるため、師匠との因縁を断つため、が考えられる。

エレノアは成り行きでスパイになったが、アルトリウスの特命によりフィーを奪取するため。

パーティひとりひとりが個人的な思惑を持っておりシリーズ上でも稀に見るレベルで自立性の高いパーティになっているのではないだろうか。

 

以上で名前が挙がらなかったパーティメンバーが1人いる。ライフィセット(以下:フィー)だ。何故、ベルベットの弟と同名なのかはここでは省きます。

主人公はベルベットだが、フィーが物語に与える影響はベルベットに比肩する程に大きいと思う。

前述したひとりひとりが自立しているこのパーティの中にあって、最も幼く、最初は自分の意思さえ定かではなく、道具として命令されるがままに生きてきたのがこのフィーである。言い方を変えると、このパーティー内で最も伸び代があるキャラクターだと言えるだろう。

前述したように、この物語のテーマに「感情と理」がある。フィーは当初、敵役である聖寮側に身を置いていたが、ベルベットの直感的な行動によりパーティの一員となることに。

私の言葉で、端的にこのパーティを形容するなら「フィーとその保護者たち」である。自立した一行の教育により理しか知らなかったフィーに「生きる者」としての感情が育っていくことになる。アイゼンが再三口にする「自分の舵は自分で取る」に代表される様に、物語の進捗度合いに比例してフィーの内面的な成長が見て取れるようになっていく。

ラスボスの口からも「ベルベットたちを支えているのはフィーだ」という旨の台詞が発せられている事からも彼の存在の大きさが窺える。

 

自立したメンバーの中で成長物語としての役割を担うのがフィーであり、パーティ全体でベルベットが体現する感情を育てていくという図式に見える。

 

【ベルベット】

ベルベットの最終目的は「弟ラフィを殺した義兄アルトリウスを殺し復讐を果たす」事。

物語中盤でとある連続する3つの出来事がある。いずれもベルベットの心を砕く為にアルトリウスが仕掛けたものだが、この辛い3連イベントを1日でこなして、ベルベットがほぼ壊れた処で寝る時間になった私は「なんだよこれ…。」と笑うしかなくなった。

そしてトドメとして、最愛の弟ラフィがベルベットの仇であるアルトリウスの協力者であり世界を支える五大神の一柱であるカノヌシとして蘇った時にはもう慣れっこになっていました。カノヌシはラフィの姿でベルベットを「お姉ちゃん」(CV:釘宮理恵)と呼びつつ、彼女のしてきたことを全て無駄だったと否定します。

半ばラフィの為にやってきた事を本人に否定され絶望したベルベットですが、フィーの言葉をキッカケに立ち直ります。 

※ここでの会話。メモはしてあるんですが如何せん長くて面倒なので端折ります。

 私の解釈で要約すると…

・フィーはベルベットがどうであろうと関係なく、自分の意志でベルベットを守ると決めた。世界にとっては無意味だろうと、フィーにとってはベルベットは無二の存在なのでベルベットがいなくちゃ嫌だ。

・ベルベットはラフィとアーサー(アルトリウス)が自分ではなく、世界を選んだことが悔しかった。

・アーサー義兄さんとラフィが全てを捨ててまで成そうとした願いをベルベットは理解した。しかし、2人を奪ったアルトリウスとカノヌシは許せない。

 

「家族を奪って、体を化物にして、今度は"心"をよこせって……?そっちこそふざけるなッ!」

 

ってな事で復活を果たします。まあ、前述した通り、物語とベルベットの目的の終着点はブレないので復活した事は既定路線だと思います。

注目したいのは上の箇条書き部分の最後の項目。ここの理屈が理解できるかどうかが、物語に対する個人の印象を大きく左右すると思います。

 私は一応理解できたので結末に関しても納得しています。

最終決戦。アルトリウスとカノヌシの神依(融合)を解き、アルトリウスの胸に剣を

突き立てた瞬間にベルベットの復讐は終わりを告げました。そこからの会話は彼女が愛し信じていた2人との会話になっていると感じます。つまり、アルトリウスとカノヌシへの復讐が終わり、ベルベットは義兄と過去のすれ違いを話し、ワガママを言う弟の面倒をみる姉に戻っていたと。

つまりベルベットが立ち直った時に自分の為という意識が重くなり、

彼女の目的はアルトリウスとカノヌシを倒し、アーサー義兄さんとラフィを取り戻すという事に 固まっていったと考えます。

そしてアーサー(アルトリウス)は死に、ベルベットとラフィは互いを喰い合う無限ループとなりエンディングとなります。

 

 OPの最後で、ベルベットたちの乗る船が明るい方に向かっていたので、ハッピーエンドになるんじゃないかという多少の予期はしていましたが…。

ベルベットは復讐を終えた後に1人行方不明となったり、自決したりする様な結末も考えていた私ですが、これはこれで結構なハッピーエンドなんじゃないかと思いました。

 

 

【世界の結末】

主人公ベルベットの結末について触れましたが、次に世界の結末についてです。

カノヌシがいなくなり、世界を支えていた五大神に空席が生じ「すぐに空席を埋めへんと世界の安定崩れるで」っていう流れになります(実際は関西弁ではありません)。

そこに名乗り出たのがフィーです。

訳あってフィーはカノヌシと同種の力を持っているのでそういった面では問題ありません。

結果から言うと、人を業魔化させたり災害を引き起こす「穢れ」というものを浄化する白銀の炎の能力を神となったフィーが世界に行き渡らせます。エンディングでは人間に戻せなかった筈の業魔の穢れが浄化され、人間に戻っていく描写があります。

「穢れ」自体を無くすことは出来ませんが、ある程度の「穢れ」ならば浄化できるというシステムです。

このエンディングによって前述したベルベット、アルトリウスがそれぞれ身をもって描く理念の不完全さが現れている様に思います。片方だけでは不十分。ふたつの大勢に属した経験を持ち、双方の考え方を合わせた上で先に進むことが出来る(伸び代がある)キャラクターが次の世界を創造していく。

勿論、フィーの答も完全な解決策ではありません。しかし私は「人間を信じて、やり直すチャンスを与える」というこのエンディングに強い好感を持ったのでそれなりに支持はしていきたいと思っている。

 

【他に色々思う処】

物語の感想だけでかなり長くなっている気がする…。

ここでは箇条書きで。

・今回の戦闘中の入れ替えは操作が簡単で良かった。

・通常攻撃が無い戦闘も慣れてきたが、そろそろ有るシステムもやりたい。

・秘奥義を発動すると連携が途切れるので、詠唱中の鋼体が強いが阻止したい敵に対しては秘奥義の意義が薄くなる。

・第2、第3、協力秘奥義は派手で見てて気持ちいいものが多くて良かった。「ロスト・フォン・ドライブ」と「インディグネイション」をありがとうございます。

・レアボード、カメラは固定せずに使いたかった。

・キャラ札が非常に面白い。花札ルールだと人から聞いて初めて知った。

・少し増えたりしたとは言え、戦闘後の掛け合い、サブイベント、チャットなどは遊びついでにもう少し増やしてくれると嬉しい。

 

 殊、バトルシステムに関しては私なんぞより遥かに詳しい方々がいると思うので、そちらの意見を探したほうが良いかも知れない。

 

 

【最後に】

書き出したら予想以上に褒めてる自分がいたが、やはりまだ物足りない部分もある気がしていて。過去の作品だから印象が美化されていると言われても否定は出来ないが、どうしても「昔の作品の方が満足感が高かった」と思ってしまう。

「穢れ」まわりの話については粗さが目立つ気がしていて、人(キャラ)の心の問題だから仕方ないのかも知れないが、影響力の匙加減が恣意的過ぎるのではないかと思ったりもしている。

後、これが1番言いたい事なんだけれど、

 

「続きもので取り返す事に慣れてほしくない。」 

 

今回のベルセリアはゼスティリアの過去編。その前のエクシリア2は、文字通りエクシリアの続編。いずれも最初に発売した方の評判がイマイチ芳しくなく…、という処からの芳しい続きもので評価を取り戻すという現象が連続している。

※私の観測範囲の印象なので間違っていたらすいません。

制作側がどう思っているのか私は知らない。しかし、もしも「売れなかったら過去編か続編出せば良いだろ」という考えがあるならば、出来ることなら遠慮願いたい。

ゲームに限った事ではないが、続きものにして見知ったキャラを出すと、物語自体が不評でもそれなりに嬉しくなるんですよ。でも私は、それに頼って作品作りをしてほしくない。

おまけややりこみ要素などでゲスト出演として過去キャラを出す分には何も言うことはないが、私としてはあまりに本編への絡みが多いのは好きではない。

まあ、昔からハード移植時に物語やらキャラやら秘奥義やら追加してきた(俗に言う完全版商法)作品群なのでそういう意味で感覚が麻痺しているのかも知れない。

 

話が飛んで申し訳ないが、現在放送中のアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」。

あの作品から、スタッフの強い覚悟を私は感じている。「ラブライブ!」時代に凄まじい人気を積み上げたμ'sというグループのメンバーを1人も出さないどころか、家族や友人すらも出さない。あるのはポスターやモニター映像、イメージだけ。台詞の端々にも「μ'sの魅力は借りない」という意志が伝わってくる。

 

すいません、話を戻します。

要は、そろそろ1タイトルでしっかり完結するものがやりたい。って事です。

それも昔は1タイトルでしっかり終わっていたからこそ抱く想いなのかも知れませんが。なんだかんだ言いつつも今回も予約をして購入しているので懐古から来る期待が残っているんでしょう。

ベルセリアが私にとって好印象だった事でおそらくまだ期待の継ぎ足し分は残っています。勝手なことばかり言っているのは承知の上ですが、次も期待を込めて購入するでしょう。

PS4専用で来たら購入確約は出来ませんが…。

 

ちょっと熱くなり最後に色々と文句を言ったけども、出来れば私もフィーの様に、

怖くて優しい、強くて弱い人間(制作)を信じて、

また次の「テイルズオブ」を楽しみに待っていようと思います。

 

【言い忘れたけども】

ベルセリアからゼスティリアへの伏線や繋がっている部分を纏めて、書き出しても面白いと思ったが今回は物語中心の感想のみで。